以前、日本の国会において「自動車整備士の不足」についての議論がなされ、有識者や関係者が集まって対策を推進していくとのことです。
私が整備士になりたての頃はそれなりに人数もいたので気にしなかったことですが、時代が変わっていくとともに価値観の変化や労働環境、待遇などで自動車整備士は減っていきました。
この件について自分なりに意見を述べたいので、少しでも皆さんで考えてほしいと思います。
自動車整備士の不足
最近は「若者のクルマ離れ」などと言われます。
一昔前は娯楽もそれほど多くなかったので、クルマが趣味という人も多かった気がします。良いクルマに乗るのに憧れた世代でした。
現代は娯楽も沢山あり、個人での楽しみ方も多様化してます。
ここ数年の平均年収の上昇停滞が自動車整備士の不足の一因と考えられます。特に若者や社会人になったばかりで、本来収入が少ない人々にとってクルマに投資する余裕はありません。
高い維持費がかかる車を所有する必要もなく、首都圏ならば無理をして所有する必要もありません。
その結果、自然とクルマへの興味が減少し、お金のかからない趣味や娯楽に時間を費やすことが有意義だと考える人が増えています。
そのため、クルマ好きな人が減少している一方で自動車整備に興味を持つ人も減少しています。整備士を目指す人は年々減少しています。
さらに、整備士の職場は(汚い・キツい・危険)というイメージがありますので、他の業種を検討するのは当然の選択です。
整備士に対する印象があまり良くないため、新人が入社したいと思えるような環境を整える必要があります。
人手不足以上に整備士になりたいという意欲が湧かなくなっています。このままではますます整備士の数が減少するのは目に見えています。
以上のような背景から、自動車整備士の不足について真剣に考える必要があると言えます。
自分も経験したディーラー勤務の実情
整備士の待遇面の他にも人材不足の原因はあります。
近年の流行病の継続により、各自動車ディーラーは売上を上げるために様々な困難な要求を押し付けられていると感じています。
来店して車を見に来る人は少ないため、新車販売では利益を上げることができません。そのため、ディーラーは点検、車検、一般修理、用品販売などで売上をカバーする必要があります。
しかし、そうすると現場に負担がかかるのは当然のことです。
経営側からは、「残業するな」「点検と車検をもっと入れろ」「ムダな経費を使うな」「お客様に商品を勧めろ」「効率を上げろ」といった自己中心的な要求がなされます。
ここで現場の責任者と経営側の意見が合致しなくなるのは自然な流れです。
無理をしなければならない状況では仕事量も増え、残業も増加します。
そして残業が増えると経営側から文句を言われるため、定休日にも関わらず内緒で出社し、業務をこなして調整するしかありません。
代休を取る余裕もありませんし、これが暗黙の了解となっています。まさに「無理が通れば道理が引っ込む」という状況です。
以上のような状況下で自動車ディーラーは運営されており、流行病の影響と販売戦略の変化が経営に及ぼす影響を真剣に考える必要があります。
会社としては利益を上げなければ経営が成り立たないことは十分に理解しています。そのため立場上、無理な要求をすることも避けられない場面もあります。
しかし、現場の実態をあまりにもないがしろにしているように感じます。
私は多くの人々が疲弊し、嫌気がさして辞めていく様子を目の当たりにしています。プライベートなどまったくありません。
自動車のメンテナンスにおいて重要な整備士を見過ごしているように見えるのは、私だけでしょうか?
会社の利益を追求することは重要ですが、同時に現場の労働環境と整備士の存在を十分に考慮する必要があります。
なぜ不正車検に至ったのかを考察
某有名ディーラーでの不正車検の摘発という事件をニュースで見ました。
どういう不正があったのかは詳しくわかりませんが、慢性的な人員不足で発生したらしいです。
自分が体験した事と同じことが他の自動車ディーラーでも起こっているんだと感じたんです。
たぶんどこかの作業工程で然るべき点検項目を点検しなかったのか・・・どっちにしても違法行為ですから弁解の余地は無いのですが、しかし今の自動車整備の環境は良いとは言えません。
車検の台数が増えればそれに応じて整備車両も増えます。しかしより大変なのは検査員です。
彼らは一台一台の検査を行い検査結果を記録簿に入力し、陸運局へ提出する書類を作成しなければなりません。この作業は検査員一人でこなすものです。
さらに検査員は他の業務も抱えていますので作業が追いつかない状況です。
陸運局の検査員とディーラーや民間工場の検査員は本来、同じ立場であるべきです。
民間の検査員は「みなし公務員」と呼ばれ、陸運局の検査員と同じく国家公務員として認められています。そのため、公務員と同じように、検査業務以外の作業は禁じられています(業務の妨害になるためです)。
しかし、ディーラーや民間工場では、接客や電話対応、他の整備や事務手続きなど、検査業務以外の仕事もこなさなければなりません。
このような状況では、本来行わなければならない業務が円滑に進められないという現状が存在します。
追い詰められた結果、必要な作業を省略し回転率を上げようとする傾向があると考えられます。
まとめ
整備士の職業には、他の職業と比較して軽視されているような印象があります。現在もその傾向が続いているように感じます。
整備士は国家資格を持ちながらも、給料の上昇があまり見られないことがあります。整備の仕事は知識と経験を必要とし、修理ができない難しい部分も存在しますが、そのような技術や知識が評価されにくい職種と感じています。
今回の記事では少々不平不満が多かった部分があったかもしれませんが、整備士の現状を理解してもらいたいという思いでブログを執筆しました。
次回の記事では、車検の料金について詳しく説明する予定です。