自動車の進化に伴い、クルマの性能は飛躍的に向上しました。
過去のクルマでは運転技術やクルマの特徴を理解しなければうまく操作できないことがありましたが、現代のクルマはそれが大きく変わりました。
例えば、私が整備士になった頃はキャブレター(機械式)のエンジンが主流でしたが、今では電子制御が一般化しています。
ブレーキにはアンチロックブレーキや衝突軽減ブレーキが装備され、駆動系ではトラクションコントロールなどの装置がヒューマンエラーを補完しています。
これにより、過去の装備は廃れつつあり、新たな装備が登場しています。
そこで、本記事では将来的に自動車からなくなる可能性のある装備について解説します。ただし、これは私の個人的な意見ですので、ご了承ください。
シフトレバー
近年、欧州の一部のクルマや一部の国産車において、シフトレバーがなくなり、ボタン式シフトが採用されています。
アストンマーティン、ジャガー、フィアットなどの欧州車やホンダなどの国産車がその代表例です。
初めてボタン操作のクルマを見た時、私も正直に言って「どうやって運転するのだろう?」と驚きました。
なぜボタン式に変更されたのでしょうか?それは、レバー式では操作ミスの可能性があるためです。
例えば、多くのハイブリッド車はゲート式のシフトパターンを採用しています。通常のAT車とは異なるシフトパターンなので、慣れていないとシフト位置を誤ることがあります。
ボタン式シフトの採用理由には、操作性の向上やガソリン車とハイブリッド車の区別化も含まれているようです。
実際にボタン式のクルマを運転したことがありますが、私のように仕事で多くの時間を運転に費やしていた人でも操作に慣れていないと混乱することがあります。
シフトレバーを慌てて探してしまい、左手が空振りすることもあります(笑)。
実際、現代のクルマではアクセル操作も電気信号に変換して制御されていますから、シフトレバーも徐々にシフト・バイ・ワイヤー方式に進化していく可能性があります。
特にハイブリッド車の場合、運転状態を総合的に制御する必要があるため、ボタン式の方が制御しやすいのかもしれません。
また、メーカー側の意図としては先進性をアピールしたいという思惑もあるようです。
アイドリングストップ
私の車にも装備されていますが、個人的な意見としては、正直言ってこの装備は必要ないと思います(笑)
数年前からクルマに搭載され始めたこの装備も、メーカーが省エネやエコを意識して開発したものです。
徐々に採用されるクルマが増え、ほとんどのガソリン車には純正装備となりました。
しかし、この省エネを目的としたアイドリングストップには少々欠点があります。
例えば、真夏の暑い日に信号待ちでアイドリングストップすると、エアコンのコンプレッサーも停止してしまいます。コンプレッサーが停止すると、エアコンの冷風が循環しなくなり、徐々に室内が暖かくなってしまいます。
また、頻繁なアイドリングストップはセルモーターに負荷をかけます。さらに車載バッテリーにも負担がかかります。
それに一般的なアイドリングストップのないクルマよりも、セルモーターの寿命が早く訪れます。
メーカーの指定によれば、「○万回使用したら交換」といった指示や、メーター内の警告灯で交換のタイミングを知らせる仕組みがあります(ECUで回数をカウント)。
加えて、アイドリングストップ専用のバッテリーは一般のバッテリーよりも割高です。容量が大きく、同じサイズの製品よりも性能が向上しているためです。
メーカー側もエアコン制御などの使い勝手の面で改善を行ってきましたが、車種によっては発進時に不安定さを感じたり、渋滞時に頻繁にエンジンが始動・停止したりすることもあります。
あまり快適なフィーリングではないという理由もあり、最近ではメーカーもアイドリングストップのない新型車を発売しています。
ちなみに、アイドリングストップをキャンセルする製品も後付けで販売されていますね。
まあ、すべての機能が電動化されれば、アイドリングストップは必要なくなるでしょうけど。
※トヨタもホンダも「アイドリングストップ」なぜ廃止する? ユーザーにメリットなし!? “消えゆく存在”となった理由とは ↓↓↓
サイドブレーキ
かつては、運転席の横にあるレバーを手で引くタイプや、足で踏むタイプなど、サイドブレーキは様々な形態がありました。
しかし最近では徐々に電子制御パーキングブレーキに置き換えられています。
なぜ電子制御が採用されるのでしょうか?
特にお年寄りや女性など、力のない方がサイドブレーキを引くと効きが弱くなることがあります。
それに運転する人によっては、引く力が強い男性から力の弱い女性などがサイドブレーキを解除するのに、解除が困難になるという欠点もあります。
そのため、手で引くタイプから足で踏むタイプに変わってきたのもその理由だと考えられます。足で踏む方が力を入れやすいからです。そして足踏み式から電動に移り変わっていきました。
電子制御パーキングブレーキならば腕力などに頼らず、ボタン操作で簡単に作動するため、安全かつ確実です。
さらに電子制御のサイドブレーキの方が、手動式に比べてブレーキの管理が容易だという理由もあります。
ブレーキホールド機能(坂道発進時に一定時間ブレーキを保持し、クルマが動かないようにする機能)などは、信号待ちや渋滞中でも機能します。
ブレーキを離していても作動しているので、少しの勾配でも動いてしまうといったことが起こりません。
それにACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)と連動し、車速追従機能としての制御がしやすくなるというメリットがあります。
これらを機能させるためにECUがブレーキも制御・管理しています。
手動式のサイドブレーキは一部のスポーツカーなどでのみ採用される可能性がありますが、それでも徐々に廃れていく傾向にあると考えられます。
エンジン
日本政府は、国内販売車の電動化に関して明言しています。
2040年までに、新車販売において脱炭素燃料の車両を含む電動化を100%実現すると表明しています。
これにより従来の内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)を搭載した車両は数が減少し、将来的には存在しなくなることになります(ただし、ディーゼルトラックは除外されています)。
こうなると内燃機関に関わる企業や部品メーカー、エンジン技術者などは変革を迫られることになります。
他の国でも同様の傾向が見られ、ユーロ圏ではすでに進んでいます。
現時点ではエンジンは自動車以外でも使用されており(農機具や発電機、船外機など)、すべてがすぐになくなるわけではありませんが、徐々にカーボンニュートラルに向けて進んでいくでしょう。
近い将来、世界中の自動車がすべて電動モーターになることが予想されます。
それはまるで電動ラジコンカーのようなイメージですね。ただし、エンジン音のしない車は味気ないと感じる人もいます。
日本での充電スタンドはまだ発展途上
個人的な見解になりますが、EV(電気自動車)の普及に関して、日本の現状ではまだまだ問題があると言えます。
特に、ユーロ圏と比べてインフラの整備が不十分な点が課題となっています。
これは日本における電気自動車の弱点でもあります。
約10年前からEV用の充電スタンドが設置され、その数は徐々に増えていきましたが、現在は減少しているとの報告があります。その原因は、施設の老朽化が主な要因とされています。
EVの普及率がまだまだ低いため、新たに設置し直す費用がかかることや、利用者数が少ないためにビジネスとして成り立たないという理由も挙げられます。
また、設置場所が自動車ディーラーなどに偏っているため、他のメーカーの車を利用する際には利用しにくさや抵抗感を感じるユーザーも存在します。
EVの普及を促すためには、充電スタンドの拡充策が必要です。
現在の日本では、ガソリンとモーターを併用したハイブリッド車やPHEV(プラグインハイブリッド)の方が利便性が高いと言える状況です。
*最近はEVを推進していた欧米諸国も、ユーザー側の考えとは乖離していたようです。EV車はまず「値段が高い」、「インフラ整備がまだ十分ではない」などの理由でHV車が売れているようです。
まだ技術的な問題が残っている現状では、トヨタの「全方位戦略」という考えは正しかったと言えます。
まとめ
クルマからは他にも消えていく要素があります。その一つがMT車(マニュアル・トランスミッション)で、現在では少なくなっています。
MT車の設定があるのはトラックやバン、一部のスポーツカーなどに限られています。
ただし、スポーツカーでもパドルシフトのセミATが主流となりつつあります。
自動車業界では毎年新しい技術が導入され、新しい装備が増えていく一方で、古い装備は次第に廃れていく傾向にあります。
カーボンニュートラル化や自動運転など、時代は進んでいます。
現時点では具体的なことはわかりませんが、日本政府もインフラ整備に本腰を入れて取り組んでほしいと思います。
私は以前整備士としてクルマが好きで働いていましたが、進化し安全性が向上することは良いことです。ただクルマを運転する楽しみが少しずつ失われていくのはちょっと寂しいです。
これは私個人の愚痴ですが、人間が操作できる要素は少しでも残ってほしいと思います。