まず始めに、今回のこの記事に関する内容は決して高齢者のすべてに当てはまるという訳ではないと言うことを予め申し上げておきます。
高齢者だから・・・というような偏った内容の記事ではありません。
しかし最近の高齢者による事故の報道が目立つようになっており、原因を追求して対策することが必要になります。
「高齢者がアクセルとブレーキを踏み間違えて・・・」とか「高齢者が暴走して・・・」などといったニュースが以前よりも増して多くなった気がします。
こういう事故が起こる度に免許証の返納や高齢者講習の制度のあり方などが叫ばれますが、高齢者がクルマを使わざるを得ない事情もあり、多少の衰えに気付いていてもクルマが無いと困る高齢者が多いということです。
今回、この高齢者が交通事故を起こす原因を自分なりに考察しました。
日本国内の高齢者の割合
今現在、日本国内の高齢者が占める人口の割合は高くなってます。
去年の2022年の日本の高齢者(65歳以上)人口は約3627万人で、全人口に占める割合(高齢化率)は29.1%でした。この統計は日本の高齢化が進行していることを示しています。
若い人が少なくなり、年寄りばかりの地域も多くなってきました。地方に住んでいるとそれが顕著に表れてます。
歳を重ねれば体力も落ちてくるので、どうしてもクルマなどに頼ることになります。徒歩や自転車では限界があるので、何かの用事を済ませるにもクルマが無いと不便なのは確かです。
高齢者がクルマを必要とする理由
大都市の中心部に住んでいるなら特に問題ありませんが、それ以外の地方や田舎になると何をするにもクルマが必要になります。
買い物、病院、郵便局、役所など、とうてい歩いて行けるような距離にはありません。
都市部以外に住んでいる高齢者はクルマが必須になる訳です。
今、自分が住んでいる地域もそのような場所で、バスは一応通りますが1時間に一本程度。それも学生の通学時間にあわせてます。その学生すら少なくなっているのでバスの路線は徐々に縮小されてきています。
人口の少ない地方では交通手段が限られてしまってますから、公共交通機関が整っている都市部以外に住む住人はクルマを使用する他ないという実態があります。
高齢者の交通事故の原因
高齢者が起こす交通事故の原因は色々と考えられると思います。運転歴が長く経験豊富だから大丈夫という事はありません。
若い時にはできたことも、年齢を重ねていくごとにできなくなってしまうこともあります。
考えられる交通事故の原因を自分なりに挙げてみました。
運動神経の衰え
アクセルとブレーキの踏み間違え・センターラインからはみ出す・まっすぐ走れないなど、運動神経の衰えは運転に支障をきたす恐れがあります。
特に「踏み間違え」などは、自分はブレーキを踏んだつもりでも、少し脚の位置がズレてしまえばアクセルペダルを踏んでしまいます。
それで「あっ間違えた!」と気付いてブレーキを踏み直そうとしても、若い時と違って思うように体が動かないなんてことが起こります。
ブレーキが間に合わなくて突っ込んでしまう、もしくは間違いに気付いてもすぐに行動に移せないというのが考えられます。
そもそもブレーキを踏み直したつもりでアクセルを踏んだままなんてこともあり得ます。
高齢になれば頭でわかっていても腕や脚が思うように動かなくなってきます。要するに反射神経が鈍くなってしまって脳から筋肉への伝達が遅くなってきている証拠です。
若い時に比べて反応が鈍ってくるのは仕方がありませんが、咄嗟の出来事に対処できなくなっているので危ういのは確かです。
体力(筋力)の衰え
上記に挙げた内容と被りますが、左右にふらついてしまったり、一定の速度を保てない運転も反射神経と関連して手足の衰えが考えられます。
感覚が鈍るという表現が正しいのかどうかわかりませんが、手足の筋肉が衰えてしまうと微妙な操作がしにくくなります。
ちょっとアクセルを踏んだつもりでも、その「ちょっと」という操作ができない。
少しだけハンドルを微調整しようにも腕が思ったように動かないから操作が遅れてしまいます。
脚の動きもスムーズにいかなくなり、アクセルとブレーキの操作が雑になりがちです。
それと、運転におけるあらゆる操作がどうしても遅くなり、普通の人よりもワンテンポ遅れます。
突然の飛び出しや他のクルマの挙動に対しての反応が遅れると事故になる恐れがあります。
高齢者の思い込み
以前に自動車整備士をしていた頃、年配の方が軽トラックのマニュアル車を新車で購入して、わずか3ヶ月でクラッチ板をダメにしてました。
足が思うように動かないので半クラッチ状態で走行してしまったのが原因です。
しかも本人はクラッチから脚を離したつもりで運転していたようですが、実際にはクラッチに脚を乗せたままの走行をしていたようです。
半クラッチ状態では動力が伝わりにくいですから、思ったように走らないため本人は加速するためにアクセルを踏みます。
しかしアクセルを踏んでも加速が悪いから更にアクセルを踏みます。本人は半クラッチ状態でアクセルを踏んでいるということを自覚してないんです。
通常、マニュアル車のクラッチ板は車種や使用目的によって違ってきますが、ベテランが乗ればそれこそ20万キロ以上は走れます。
足腰が弱るとクラッチを踏んだり離したりという操作もぎこちなくなり、半クラッチという動作も難しくなってきます。
本人はちゃんと運転しているつもりでも、実際には正確な操作で運転していないことになります。
もしかしたらこのような思い込みで運転をしている高齢者もいるかもしれません。
その他にも、過去に会社役員や重要なポストで仕事をしていたような高齢者は「過去の自分の立場」の感覚が未だに残っているようで、わがままな運転をする人もいるようです。
もう定年退職して普通の人なのに、昔は役員や社長といった地位だったという感覚が抜けきれずに他人に対して強い口調で罵倒したり社会のルールを守らないような行為、いわゆる「老害」などと呼ばれてしまいます。これも思い込みの一種です。
そのようなワガママな運転をしないよう、あくまで謙虚で余裕を持って慎重に運転してほしいです。
視力、聴力の衰え
クルマを運転する上で一番重要な視力ですが、当然高齢になれば視力は落ちてきます。
それに高齢になると視野が狭くなる傾向があります。具体的には視野の大きさは10年あたりにつき約1~3度ずつ小さくなっていき、70~80代になる頃には周辺視野が20~30度減少していることもあります。
視野角が狭くなることで周囲の動きなどの発見が遅れて、急な飛び出しなどに気づくのが遅れる心配があります。
それと聴力の衰えも運転に支障が出る可能性があります。
運転において視力と聴力は運転中の状況を確認して適切な判断をするためには重要になってきます。
自分の車から発せられる異常な音やクルマのクラクション、サイレンを鳴らした緊急車両の接近など、周囲の状況の把握と音による情報によって運転手がどうすればいいかの判断材料になるからです。
視力で補えないところは聴力でカバーできるのですが、それさえ衰えてくると限られた情報しか入ってきません。それによって操作が遅れたり、誤った判断で事故を起こすこともあります。
突発的な発作や病気
高齢者になれば運転中に突然の発作や持病の悪化などが起こる可能性が高くなります。
それが原因で事故を起こすこともあり得るので、このような事態に陥る可能性がある持病を持っているならなるべく運転は控えた方がいいでしょう。
過去に自分が遭遇した事故がありますが、かなり衝撃でした。
自動車整備士をしていた時に遭遇した事故で、ちょうど納車が終わって路肩で迎えを待っていたところ、黒い高級車が路肩ギリギリで走行してきて商店の脇を通り過ぎて行きました。
危ないなぁと思いましたが、そのまま駐車場の壁に激突。
え!?って感じでクルマに近づくと、高齢者と思われる運転手は体をのけ反りながら痙攣していました。
その後はどうなったのかわかりませんが、多分運転中になにかしらの突発的な発作が起き、そのまま追突してしまったと思われます。
こういった突然の病気や発作は高齢者に限ったことではありませんが、歳を重ねるほど起きやすくなる確率は上がります。
クルマの安全装置
最近のクルマには障害物を検知して自動的にブレーキ操作する「誤発進抑制装置」や「自動ブレーキシステム」なども普及してます。
自動ブレーキシステム(衝突被害軽減ブレーキ)については、2021年11月から国産の新型車に対して装着が義務化されています。また既に販売されている車(継続生産車)については、2025年12月以降に義務化が課せられる予定です。
一方で、誤発進抑制装置については現在のところ国による装着義務化は行われていません。そのため各自動車メーカーが独自の判断でこれらの装置を標準装備またはオプションとして提供していますが、高齢ドライバーによる事故防止の観点から、これらの安全装置の普及が進められています。
しかしこれらの安全装置には作動条件があり、この条件は各メーカーによって異なります。ディーラーであれば納車時に説明をしてくれますし、小冊子や取扱い説明書にも記載されてます。
例を挙げると(シートベルトをしている・ドアが全て閉まっている・速度が○○キロ以上)など、この他にも色々とありますが、これらの条件が当てはまっていれば安全装置が作動します。
しかしそれらの条件以外で運転してしまえば装置は作動しませんし、そもそも年式の古いクルマには付いてません。
いざという時には機械に頼っても、最終的にはドライバーの技量です。
このような安全装置は普通に運転をしていれば作動することは稀ですが、運転中にこのような安全装置を頻繁に作動させてしまうことが多くなってきたら要注意です。
高齢者ドライバーへの対策
高齢者の事故の原因は、大きく分けて「身体機能の低下」と「認知機能の低下」の2つが挙げられます。
ですからこれらの原因を解決するには周囲の監視と本人の自覚が必要です。
高齢者のドライバーは自分の運転技術が低下したかどうかを客観的に観ることができません。
自分では正しいと思っても周囲には危険と感じる場合もあるので、家族や知り合いなどの同乗者に判断してもらうことが良い方法だと思います。
あとは定期的な健康診断や運転適性検査を受け、身体機能や認知機能の低下を把握することです。
そして、もし仮にクルマを新たに購入するということになったら、高齢者向けの安全機能が搭載された車を選ぶことです。万が一事故を起こしたとしても安全装置があるかどうかで被害を最小限にすることが可能かもしれません。
ですが将来的には免許証を返納しなければならなくなります。その時にクルマが無くても生活に支障が出ないように国が何かしらの施策を打つ、もしくは民間が協力して高齢者へのサービスを提供するような対策が必要です。
こういった高齢者向けのサービスは今後多くなっていくと思います。
まとめ
交通事故は特に高齢者が多いという訳ではなく、高齢者特有の原因があるということです。
現在のクルマには衝突軽減や誤発進抑制装置などの安全装備がありますが、それらの装置があったとしても事故は起こってしまいます。
こういった安全装置も取り扱いを間違えれば意味がありません。正しい使い方や作動条件を理解して安全運転をして頂きたいと思います。
高齢者の方は自分の運転技術を同乗者に客観的に判断してもらう事が必要です。
そして自分の運転技術を謙虚に受け止めて、免許証返納の時期を判断して頂きたいと思います。
国の方も、免許返納後の高齢者の生活を支えるための施策を早急に打ち出さないと、この先の高齢者の生活が困難になる恐れがあります。
ちなみに私の住んでいる地域では、ある有名スーパーの移動販売が話題になっています。近くの空き地に商品を積んだトラックが決まった曜日にやってくるそうです。
このように買い物に行かなくても商品の購入ができるような、高齢者向けのサービスを充実させるための改革をしてほしいです。